TMJ=顎関節(がくかんせつ)症候群はアゴの痛み、口を開ける時の関節音、口の開けにくさ、外れやすさ、違和感をまとめた診断名称です。20代前半と40~50歳代に多く、女性と男性の比率は4:1となっています。
顎関節症で慢性的な痛みがあると、それまで抱えていた不安や抑うつ感情が悪化する可能性があります。そのためストレス管理、リラクゼーションなどのケアが必要なこともあります。
顎関節は人体で最も複雑な関節だと言われることがあります。それは蝶番のように開け閉めするだけではなく、スライドの動きを伴いながら口を開ける動きをしているからです。
アゴに何が起きているのか?
顎の症状を引き起こす原因として次の4つに分類することができます。
- 筋肉由来の痛み
- 関節構造物由来の痛み
- 関節円板のひっかかり
- 関節軟骨の変形
の4つです。
筋肉由来の痛みは、咬む筋肉が関係します。食いしばり、歯の知覚過敏、精神的緊張によっても咬む筋肉の緊張が起こります。
関節構造物由来の痛みは、顎関節にある痛みセンサーが反応している状態です。顎関節は側頭骨と下顎骨、その2つの骨を結合させている関節包、靭帯によって作られています。関節包や各靭帯には痛みセンサーがあり、かみ合わせの悪さ、精神的緊張、筋緊張、姿勢によって関節がゆがんでしまい、センサーが働きます。
関節円板というのは、側頭骨とか下顎骨との間にあるクッションです。通常、口を開けたり閉じたりする運動では関節円板も一緒に動いて側頭骨と下顎骨の間にいるよう保っています。ところが関節円板の動きが悪くなると側頭骨と下顎骨の間を保てず、痛みや関節音が鳴ります。最も多いのは関節円板が前に移動したまま動かなくなっているものです。その場合、口を開けにくくなり、開けるときにはポキっと音が鳴ります。
関節軟骨の変形は長期にわたって顎関節の内部が損傷と修復を繰り返した結果起こります。その他、リウマチ、感染などでも関節の変形は起こります。
医学的な治療
- 鎮痛薬
- マウスガード、スプリント
- 場合によっては抗不安薬
オステオパシーのケア
頭蓋骨、頚椎、上部胸椎の検査をして機能障害があれば、それらを取り除きます。機能障害というのは、筋肉や関節周辺組織が緊張し可動性が少なくなっている状態です。俗に言う「ゆがみ」と捉えていただければ結構です。頭蓋骨、頚椎、上部胸椎は筋膜を介して顎関節の運動とつながっている部位で、主に姿勢によって問題を引き起こします。
側頭骨の検査をして機能障害があれば、それを取り除きます。側頭骨は顎の骨である下顎骨がはまっている骨です。この骨が左右で位置が違っていると顎関節の運動に影響が出ます。また足の長さが左右で違っていたり、骨盤の位置が左右で傾きがあったりすることでも側頭骨の左右差が出るため、脚や骨盤の調整が必要なこともあります。
噛む筋肉、口を開ける筋肉の緊張を取り除きます。特に外側翼突筋という筋肉は関節円板の運動に関わるため、この筋に異常をきたすと口を開ける時にポキッという音が鳴ります。噛む筋肉も口を開ける筋肉も精神的な緊張によって硬くなるため、ストレスマネージメント、全身のリラクゼーション、呼吸法などが必要な場合があります。また睡眠が浅くても噛む筋肉が硬くなるので、睡眠時無呼吸症候群の検査が必要な場合があります。
改善のポイント
通常、顎関節のトラブルは多因子により生じることに注意しなければいけません。
虫歯があれば治さなくてはなりませんし、ストレスもうまく発散したり、質のよい睡眠も心掛けなければいけません。そのうえで痛みをコントロールしながら顎関節の構造を整えていく必要があります。歯科的、筋骨格的、心理的なバランス変化が結果として顎関節の異常を形成しているのです。