頭蓋骨は2つの領域に分類されています。脳の容器となる神経頭蓋(neuro-cranium)、そして顔の骨格を形成する内臓頭蓋(viscero-ctanium)の2領域です。顔なのになぜ内臓頭蓋という名前がついているのかわかりますか?鼻は肺や気管など呼吸の臓器である、口は胃腸と同じ消化の臓器である、目や耳は感覚の臓器である、という分類をされているため内臓頭蓋と呼ばれています。


神経頭蓋はさらに2つに分類することができます。脳を覆って保護している膜性神経頭蓋と脳の底に接する部分である軟骨性神経頭蓋の2つです。膜性神経頭蓋は膜が骨化していき平べったい骨になっていきます。膜性神経頭蓋の各骨の間には縫合と呼ばれるつなぎ目があります。小児では縫合が広く、大人になるほど狭くなり、最終的に消失するものもあります。新生児では3つ以上の骨が接する場所で縫合がより広くなり泉門(fontanelle)と呼ばれています。いくつかの泉門がありますが特徴的なのは、2つの頭頂骨と2つの前頭骨が接する約25センチの大泉門と呼ばれるゾーンです。拍動を触診することができたり、視覚的にも拍動しているのを見られることもあります。成長に伴って狭くなり1歳半~2歳で縫合だけが残ります。

出典:ラングマン人体発生学


このように広い縫合といくつかの泉門があることにより頭蓋骨は可動性を持っています。そのおかげで母体の骨盤を通過する際、頭蓋の各骨が互いに重なり合い通過しやすくなるモールディング(mollding)が起こります。出産直後に重なりあった頭蓋骨の骨は触診可能ですが、しばらくすると自然に元位置に戻ります。

Newborn head molding


このように胎児や小児の頭蓋骨は高い可動性を持っているため外力に影響を受けやすいのです。そのため歪みを作りやすい構造物であると言えます。子宮内でのポジションや、分娩時の母体骨盤を通過するとき、吸引、鉗子分娩などにより胎児の頭蓋にはどうしても圧力がかかります。出産は頭蓋骨の歪みをつくりやすい最初のイベントということになります。
しかしながらほとんどの頭蓋骨の歪みは自然に矯正されます。これは各骨の成長する力によるものです。生後から脳が急発達していき、それに伴い頭蓋内の圧力が高まり容積を拡大させようとします。内側から力を受けた各骨は成長を促され、頭蓋骨は風船を膨らますように広がり大きくなっていきます。この頭蓋骨が広がり大きくなろうとする力で分娩時に作られた歪みの多くは自然矯正されます。


90~94%の歪みは自然に解消されますので私たちが対応するものは残りの10~6%程になります。出生後から歪みが気になるものがあれば4~6ヶ月まではそのまま様子を見ていただき、解消されないものに関しては治療を行うことになります。

頭蓋オステオパシー前後