問いに帰ると「普通と異常の線引きをしているのは誰か」でした。

偉い人、つまり権力だ、と先に述べました。ここで言っている偉い人、権力というのは国家権力だ、マスメディアだ、ビル・ゲイツだ、とかそういうことではありません。

ここで言っている偉い人、権力というのは、社会の中で何か問題が起こった時にその原因を個人の身体に求め、「異常」を取り出して提示する人のことを指します。例えば「職場でメンタル、体調を崩している、でも休みの日は元気なるなんていう若者がいる。そういう職場が増えている、これは問題だ。原因は若者の身体に『現代型うつ』という『異常』がみられるぞ。」というように、問題の原因を個人の身体に探しに行き、何かを「異常」として取り出し、分類しカタログ化していく人のことを偉い人、権力と、ここではそういうことです。

私自身も骨なり筋肉なり神経なりから「異常」を取り出し、分類しているわけですから、「異常」を創造し提示している偉い人、権力ということになるでしょう。

私を含め健康産業は「健康をつくる」と言いながらも新たな「異常」を創造し、ラベリングする「権力」を持っていることに注意を払う必要があります。

実際に産業社会は多くの「異常」を生産してきましたし、これらかも生産するでしょう。なぜなら「異常」はよく売れるからです。自身の中から何か「異常」というタグ付けをされると人は不安になります。何とかその異常を取り払いたくなる。

「自分そういうの別に気にしないんで」と反駁することはできますが、実際に「異常」を突きつけられると、拘束され従わされる力学が発動します。

解消したいのでインターネットで情報を閲覧し、ユーチューブの解説を見て、商品やサービスを買うことになり、グーグルやユーチューブ、アマゾンの成長に貢献しているのです。資本主義は「異常」の生産と消費によって成り立っているともいえるかもしれません。

「正常」と「異常」に線引きするのは、医学であることはもちろん、国家であり、企業であり、メディアであり、個人でもあります。そういうものの相互作用で社会的に「普通」と「異常」の線引きが常に行われているのです。