子宮内膜症は子宮内膜に似た組織が卵巣や腹膜、消化管など子宮とは別の場所にできる疾患です。

子宮内膜は月経周期に伴って破壊され炎症が起こるので、別の場所にできた子宮内膜組織も同じタイミングで破壊と炎症が起こります。その結果、腸に炎症が頻発することがあります。そして腸の炎症が繰り返されることにより過敏性腸症候群を引き起こす可能性があるのです。

1996年の研究では急性腸炎の患者が炎症が全て終わった後、29.3%の人に過敏性腸症候群が発生するという結果が出ました。(Gwee KA, Graham JC, McKendrick MW, et al: Psychometric scores and persis tence of irritable bowel after infectious diarrhoea. Lancet 347 150-153, 1996)

この観察で過敏性腸症候群が発生した患者群と発生しなかった患者群を分ける大きな違いは炎症時点の心理的ストレス(抑うつ、不安)の有無であるという点です。これは腸に起きた「炎症ストレス」と脳に起きた「心理ストレス」の二重負荷は、腸管に分布する神経ネットワークを変化させる要因になるということが示唆されています。

つまり子宮内膜症によって消化管、特に大腸に炎症が起き、その時点で何かしらの心理的ストレスを抱えていた場合に腸の神経が過敏になってしまう可能性があるのです。
このように子宮内膜症と過敏性腸症候群は別のものと考えるのではなく、つながっているものと考え、婦人科系の受診と治療も同時に行うことを推奨しています。