神経が過敏になると、体はいろいろな反応を起こしやすくなります。

例えば、小さな刺激でも痛くなったり、お腹を壊したり、トイレが近くなったり。また体ではなく心も反応しやすくなります。ささいなことでも気になったり、悩んだり、イライラしたり…

個人的には心、お腹、不眠の問題を持つ方が多い印象を受けます。

このように神経が過敏になって、症状が出ると「何か病気が潜んでいるのかも・・・」と考えて病院に行くと思います。それは正しい判断です。

ところが、全く何も異常がない、ということがけっこうあります。

なぜ体に何も異常がないのに神経が過敏になるのでしょうか?そこには日本人ならではのある意外な理由があったのです。

自分の感情を外に出すことを控える文化

なぜこのような文化を持っているかというと、日本文化では和を大切にしているからです。個人利益よりも公益性の方に重きを置いているのです。感情を出すということは個人の欲求を誰かに伝えるということ、つまり個人的な感情はなるべくコントロールして、共同体のために生きましょう。という価値観を持っているのです。

あなたも経験があるかもしれませんが、愚痴や文句を言っていると止まらなくなってたくさん出てきてしまうことってありますよね。これを「エゴ(自我)の肥大」をいいます。肥大したエゴは全体のこと、つまり共同体のことよりも自分を守ることに必死になってしまうのです。

ですから、和を尊きとする日本精神では「エゴ(自我)の肥大」を防ぐために感情を外に出さないことに価値をおいたのです。この精神は「克己(こっき)」と呼ばれています。海外の方には「日本人は何考えてるかわからない」と言われるはずですよね。

本来は克己の精神は共生のために大切なものなのですが、いくつかデメリットもあります。そのひとつが「神経が過敏になる」という点です。感情を外に出さないことで、ある脳の働きが低下することがわかっています。この脳の働きが低下することにより、内臓につながっている神経の過敏性が高くなるのです。

では「ある脳の働き」とは一体何でしょうか?

「感情を言葉にする」という脳の働きが低下する

それは「感情を言葉にする」という脳の働きで感情言語化能力と言います。私たちは何か心の動きを感じた時に「なんかソワソワするなぁ、う~ん、これは不安かな」「いやどっちかというと焦りだな」と心の状態にラベルを貼って分類しています。感情に言語処理して認知しているのです。

この働きをする脳の部位を前帯状回(ぜんたいじょうかい)と言います。感情を外に出さない傾向の人は、感情を言葉にするという作業をあまりしてきていないので、前帯状回が発達していません。すると心の状態を脳が認知できなくなります。脳は「心がどんな状態かわからないなぁ、よし!もっと神経を研ぎ澄ませてみよう」と神経を過敏にしていきます。このようにして過敏になった神経が、心やお腹、不眠などの症状に移行していくのです。

神経が過敏になっている人は、症状に対しての治療(抗精神薬、睡眠薬)だけではなく前帯状回を発達させて心の状態を脳が認知できるようにしなくてはなりません。つまり「感情を言葉にする」練習が必要になってきます。

「感情を言葉にする」チカラを伸ばすために必要な事とは

いくつか練習方法がありますが、簡単なものは日記です。ただ出来事を記録するのではなく、自分の感情を「What」「When」「Why」で記録します。

  • 「What」何という感情か?例:怒り
  • 「When」いつその感情になったか?例:運転中、割り込みされた時
  • 「Why」なぜその感情になったか?例:迷惑をかけられたから

「What」「When」は簡単に書けますが「Why」は悩むことが多くなります。ポイントは自分が何を望んでいたか?考えてみることです。望みに近づいた時に快適な感情が起きますし、望みから遠ざかったときは不快な感情が起きているはずです。

もうひとつのポイントは、素直に記録するということです。自己啓発やポジティブ思考が好きな方ですとよく「○○で大変だったけど、これはラッキー!だって私を成長させてくれたんだから!感謝!」というような記録をすることがあります。それが心で感じたことであればOKですが、脳で無理やり修正している場合はNGです。本来の感情を言語化し認知するという主旨から外れているからです。

私たちのサロンでは神経過敏による症状を持つ方に感情日記を書いてもらい、気持ちを言語化する練習をするのですが、最初の1ヶ月はうまく書けなかったりします。このような状態を失感情症と言います。これはネーミングを見ると感情が無い状態だと思ってしまいますが、そうではありません。感情を言語処理するのが苦手という状態なのです。

感情の認知力が弱くなると、神経は過敏になり、心、お腹、不眠などの症状につながります。感情を抑えること、時には必要ですが、ありのままの感情を受け入れることも必要です。

あなたは感情にフタばかりしていませんか?ありのままの感情を受け入れていますか?