怖いという情動は何かしらの危険が近づいていることをお知らせしているサインです。これは脳にある番犬が何かを感じとり、吠えて主人に知らせようとしているのです。このような脳に住む番犬のおかげで我々人類はさまざまな脅威をくぐり抜け生き延びることができました。

扁桃体という番犬

この番犬は扁桃体(へんとうたい)と呼ばれています。私たち人類は扁桃体という番犬に幾度となく救われました。しかし、この番犬に悩まされることもあります。それは全く無害なことにも吠えたり、頻繁に吠えたりすることで主人を疲れさせてしまうことです。

人によっては警戒心の高い扁桃体を持っていることにより、パニック発作を起こすこともあります。

脳の扁桃体が「何か危ないかも」と感じ取るとコルチゾールやアドレナリンと言うストレスのホルモンを増やします。すると体は「何か危ないかも」に備えます。「闘争か逃走」モードになり、心臓はドキドキし、緊張を起こします。これは交感神経の働きです。

幸いなことにこのような交感神経の働きは意図的に静めることができます。この働きを静めるには肺を伸ばせばよいのです。なぜ肺を伸ばすと交感神経の働きが静まるのか。それは肺を包んでいる膜にセンサーが埋め込まれており、伸びを感じるとリラックス神経である迷走神経が作動するからです。これをヘリング・ブロイエル反射と言います。

では、どうすれば肺を伸ばすことができると思いますか?

1番簡単なアイディアは深呼吸でしょう。意図的に深く呼吸することで通常よりも肺を伸ばすことができます。ヨガやピラティスなど呼吸を使ったエクササイズも良いですね。YouTubeなどで探す時のコツは、呼吸を誘導してくれるものを探すことです。(筋トレや体幹トレーニングを目的としたエクササイズ動画は肺の伸びを止めてしまいます。)

胸式か腹式か

腹式呼吸の方がよいですか?と聞かれることがありますが、胸式、腹式どちらでもかまいません。大切なことは深く呼吸をすることです。頭で考えるより、実際にやってみるとわかるのですが呼吸に胸式も腹式もないことがわかります。つまり胸も腹も両方使っていることに気づくでしょう。

では、反対に何をしてしまうと肺は伸びなくなると思いますか?

それは、座り姿勢です。座っている姿勢は立っている姿勢に比べて肺が伸びなくなります。つまり呼吸が浅くなるということです。タニタさんがある実験をしました。それは座って8時間勤務した人と立って8時間勤務した人で換気量を比較する実験です。すると座っているグループは立っているグループの約半分しか換気できていなかったようです。つまり座っている時はかなり呼吸が浅い状態だったことが判明したのです。

怖さを整えるには、克服しよう!乗り越えよう!ポジティブに考えよう!などの根性論になりがちです。しかし、意外にも簡単なことの積み重ねで感情は変化します。深い呼吸をすることで肺のセンサーに刺激を与えることで感情が変わるのです。